【感想】ルーム
★★★★☆
生まれてから5年間、小さな部屋と母親と時折訪れる男性しか見たことがなかった子どもが、
ある日突然外に出る。
トラックの荷台から見る初めての本物の青空、
荷台から飛び降りた先で出会った初めての「ママ」以外の人間。
部屋と母親だけが「本物」だった子どもに突然現れた、目まぐるしい情報量の世界。
追いつかない様子がよく伝わる描写がされている。
そして何より、子どもは時々無意識ながらに親を救う。
母親が自殺未遂をした時、
彼はそれまで長く伸ばしていた髪の毛を切った。
生まれて初めて髪の毛を切った。
彼は「髪の毛に強さが宿っている」と信じていて、だから監禁から解放されても髪の毛は切りたくないと言っていた。
でも、「切った髪の毛をママにあげてほしい」
彼は母親に強さをあげたくて、髪の毛を切ってもらうことにした。
母が回復した後、
彼は監禁されていた部屋に帰りたいと言った。
戻って何をするのかと思えば、
当時毎朝起きたら部屋の中にある物全てに「おはよう」を言っていたように、
部屋の中にある物全てに「さようなら」を言った。
そして彼は母親に「ママもさよなら言って」と何気なく言う。深い意味はない。
子どもには、半ば本能的に大切な家族を救うことができる特殊能力がある。
彼は頭の中で「この監禁されていた部屋にさよならを言うことで、これから先の人生をスタートさせることができるよ、だからママ、さよならを言って」なんて考えていたわけではない。
そんな大人みたいな人の救い方は彼はまだできない。
でも本能的に、意図せず、大人よりストレートに、できてしまう時があるのが、子どもの特殊能力。
以上です。